エリス嬢の話【文スト夢注意】

夢主 文スト 足立一之
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最高ランク : 20 , 更新: 2019/03/21 2:56:57






俺は13になるまで、陽の光を浴びることはできなかった。
時間に関係なく電灯が煌々と照らす、四方八方が黒いコンクリートで固められた四角い箱。
大股五歩で行き着いてしまうほど狭いこの世界で、俺は24時間鎖に繋がれて生きていた。

暗くて、狭くて、心を動かすものが何一つ存在しない場所。
この地下牢は、感情という干渉不可能の領域で威力を決定づけられる異能者を閉じ込めておくにはもってこいだ。

そのように考え、全てを諦めることができれば、狭い檻の中でも居心地は悪くない。12だった俺はそれを悟り、

毎日 知らないことを頭に入れることだけを繰り返していた。

「こんなところにいたらダメ」

……このように、他人に言われることなく過ごしてきたのだ。
それまで何の疑問も湧かなかったのも我ながらおかしな話だと思うが。
俺はその時初めて、他人から声をかけられるという行為に応対する意識が湧いたのだった。

「……なに?」

甲高い声がして振り返ると、鉄格子の向こうには光をいっぱいに含んだように輝く何かが居た。

真紅のドレスがひらひらして、このような光を通さない闇の中でも透明に瞬く青い瞳が強気に俺を射抜いている。

綺麗な、女の子だ。
その白くてふわふわした手が黒の柵を越えて、俺にまっすぐに差し出されていた。

「………君は、」
「どうだっていいじゃない。ここよりも、ずっと本を読むのに向いてる場所を知ってるの!」

俺がどうしてここにいるのか知ってるの。俺が、誰だか、わかってて言ってるの。俺なんかを助けたらどうなるかわかって言ってるの?
聞きたいことはたくさんあった。
そのどれも、俺が彼女に尋ねる前に『どうだっていいわ』の一言で済まされてしまう。
それでも俺が手を取らないのを不機嫌そうに睨みつけながら、彼女は青い目を細めて言った。

「なにしてるの?こんなところにいたら、おかしくなっちゃうわ」
「…貴女こそおかしなことを言うね。前提を間違えてる。ここを出ようとする方が正気じゃないんだ」
「……怒られるの?」

怒られる、どころじゃないよ。
いや。まさかそんな血生臭いことは彼女に言えまい。
それでも不安を少しでも減らしたくて、俺は何も言わずに彼女の言うことに頷いた。

「それなら、怒る大人にこう言いなさい。『エリスちゃんと遊んで居ました』。魔法の言葉なのよ!」

私を誰だか知ってるの?
そう続けて笑う彼女は自信に満ち溢れていて、可愛いともカッコいいともつかない、不思議な魅力があるように思われた。

「(きれいな、おんなのこ)」

それから あっという間に俺を連れ出して、誰の目にも止まらずに駆け抜けていく姿は流れ星みたいだった。
檻から連れ出す貴女の後ろ姿を、
その金の髪が揺れるのを、俺はずっと眺めていられると思った。

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アバンギャルド・マボ


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(絵は描けないけど文字じゃなくて漫画にしたい話もあるから完全二律背反)

アバンギャルド・マボ 2018/10/20 5:03:18